水資源環境研究センターとは? 水資源環境研究センターは、水資源問題に関わる自然・社会現象を理解する目的で、1978年に設立されました。本センターを構成する5つの研究領域は、互いに連携をとりながら、ジオ・ソシオ・エコシステムの統合としての水資源を保全・開発するためのマネジメントシステムを研究しています。水資源環境の評価・予測のため、気圏―水圏―地圏を連続体として扱い、流域規模から地球規模までの水循環、物質循環を科学的、定量的にモデル化しています。それらに基づいて、気候変動、地球温暖化、都市化、東日本大震災のような大規模災害などが及ぼす水資源の社会的・生態的リスクを評価し、水資源の持続可能性・健全性・健康性の探究を行うとともに、ナイル川,ベトナム紅河流域などの世界の水問題解決に貢献します。また、UNESCO-IHP研修コースを隔年で開催するとともに、GCOE-ARSやGCOE-HSEなどのプロジェクトに参画しています。 地球水動態研究領域(堀研) 人間の社会・経済活動と地球規模水動態との相互作用を分析し、水資源問題の解決に資するために、経済‐社会活動を組み込んだ全球水資源ダイナミクスモデルの開発、水資源の時・空間分布状況推定のためのグローバル水文量のダウンスケーリング手法の開発に取り組んでいます。また、地球規模の水動態の結果として発生する水災害を防止・軽減する具体的施策を、人間行動を含めて分析するため、水災害軽減のための地域対応のモデル化と計画手法について研究を進めています。 地域水環境システム研究領域(田中研) 分布型流出モデル、陸面過程モデル、地下水モデル、水質モデル、土砂輸送モデル、食物連鎖モデル、作物生育モデル、貯水池操作モデル、社会経済モデル等から構成される「統合水資源管理モデル」を開発しています。本モデルは物理的水循環モデルをベースに、いわゆる自然の水循環を記述するだけではなく、貯水池による洪水流量の調節、各セクターからの水需要の推定、その需要を満足する貯水池からの放流といった人工系の水循環も合わせて記述する統合モデルです。現在の水循環システムの信頼性の診断、水資源管理支援、今後の気候変動下での洪水リスク、渇水リスク、生態系リスクの評価並びにリスク低減策の検討、流域内での放射性物質の移動追跡など様々な問題への応用を目指します。 社会・生態環境研究領域(角研) 水資源における中長期的な環境的課題に取り組むために、自然的(ジオ・エコ)・社会的(ソシオ)環境変化が、水資源システムにどのような影響を与えるかを分析し、リスクマネジメントの観点から研究を行っています。また、水域の生態系サービスの持続的享受を目的とした、治水・利水・環境のバランスのとれた統合的流域管理手法に関する研究を行っています。具体的には、以下のような基礎的研究課題を進めています。 1)水資源開発ダムのアセットマネジメント手法と貯水池土砂管理技術の開発 2)生息場構造を介した生態系—土砂水理連携モデルの開発 3)水辺環境の利用と生態系の相互作用に関する研究 水資源分布評価・解析研究領域(客員) 水・熱・物質循環系の動態解析や人間・社会と自然との共生を考慮した水資源システムの評価・計画・管理研究推進に際しての知識供給や技術支援のため、また、社会的要請の大きな時事的課題に対処するために、これらの課題に適した研究者が招聘されます。現在は、水動態モデルシミュレーションやリモートセンシングなどの水文解析手法を用いて気候変動に伴う流域環境の変化を予測評価する研究や,野外調査とシステム工学的アプローチにより生態系サービスを評価する研究を行っています。具体的には、以下のような課題を追究しています。 1)分布型流出モデルの流量変動予測値を用いて流域環境の生息場適性を評価する手法を開発し,流域スケールで生物多様性などの生態系変化を予測評価する研究 2)都市化や産業構造の変化シナリオ分析に基づく里山・里海の生態系サービスの定量評価や農村地域におけるバイオマス資源の利用システムの検討 |