センター研究報告第25号発刊にあたって

Preface


 水資源研究センターは,水資源を自然および人間活動の両面から総合的かつ有機的にとらえ,水資源に関する学理を究明することを目的として1978年4月に京都大学防災研究所の附属施設として設置された。2専任部門・1客員部門ながらわが国で唯一水資源を冠する中核研究センターとして,また,琵琶湖水資源・水環境の調査研究をはじめとするいくつかのプロジェクト研究をかかげ,数々の研究会を開催して全国共同利用のセンターとしての役割を担ってきた。

 1981年には,これら研究会の成果や水資源に関する国内外の活動情報などを記録・公表する形で第1号の水資源研究センター「研究報告」が発刊された。その後も毎年出版する方針で回を重ね,2000年には第20号「記念号」を発行するまでに至った。この間,1988年3月には当センターが世話幹事として動き,全国規模で水文・水資源に関連する研究・技術分野を糾合する形の水文・水資源学会が設立された。センターの共同利用研究者の多くは水文・水資源学会にも参加し,水資源をとりまく広汎な研究フィールドに学際的・国際的研究活動に鋭意とりくまれている。

 水資源研究センターはこうした学会活動とも連携しつつ,専任研究領域の拡充や組織体制を整備すべく1996年防災研究所の改組に伴い,改組拡充をはかった。すなわち,地球規模及び都市・地域規模での水資源を取り巻く自然・社会現象とその変化を多角的にとらえ,ジオシステム・エコシステム・ソシオシステムの総体としての水資源の開発と保全のシステムを総合的に研究することを目的とする全国共同利用の研究センターに衣更えし,地球規模水文循環,都市・地域水文循環,地域・水利用システム計画,という3つの専任研究領域と外部の研究者を客員として迎え,一定期間特定課題について集中的に研究を行う水資源共同ネットワーク研究領域から構成される組織に拡充した。そして当面の統一研究課題としてセンタースタッフが共同研究する総合流域環境評価プログラムを下図のように描き,個々の研究テーマの深化発展と連携融合をはかる体制を整えた。

 本年2005年4月には防災研究所はさらなる改組を進め,水資源研究センターは水資源環境研究センターに名称を変更するとともに,めざすべく目的を以下のようにより具体的に描いた。すなわち,流域・地域規模から地球規模までの水循環・物質循環を対象に気象・水文学的観点より科学的・定量的にモデル化し,水資源環境評価のシステム論的な方法を展開する。また,地域開発,水利用,汚染物質排出の影響を考慮しうる流域規模での水環境対策を検討する。さらに,人間動態のニーズや地域・流域変化が社会や生態環境に及ぼす影響を踏まえて,水資源の社会的・生態的リスクマネジメントの提案を行う,というものである。専任研究領域は3つのままであるが,その名を地球水動態,地域水環境システム,社会・生態環境に改め,それにともなう人員配置もはかった。前述の統一研究プロジェクト研究は社会環境・リスク・コンフリクト分野を包含強化しながら引続き発展させることとしている。

 一方,センターの研究報告は2000年以降も引続き出版され,本第25号を出版する運びとなった。本号では,編集出版の負荷やエネルギーを緩和するとともに,公表ネットワークを拡張し,アクセスしやすい形での情報公開をめざすために,出版を紙媒体から電子媒体に変更することを決定した。したがって,次号26号についてもさらに装いを新たにした電子媒体で配信させていただくことになる。

 センターの改組およびセンター報告第25号の発刊と今後の出版方針を述べさせていただき,水問題が国内外ともグローバル化するなか,水の世紀21世紀にセンターが研究ネットワークと連携し,広汎な問題の考究にチャレンジし,全国共同利用の性格をさらに活かすべく皆様には従前にもましてご支援ご協力をお願いする次第です。今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

2005年4月

センター長 池淵周一


センター報告トップページへ戻る