「GPVの精度評価」山田修論
「地球温暖化による流域水資源・生態への影響評価」小尻利治・浜口俊雄・大出真理子
本研究では,GCMデータを使用し,気象・水文学的側面,水資源工学的側面に関して,分布型流出モデルを用いて流域内の各項目を評価することで,流域での温暖化影響評価を行った。結果として,対象流域においては,降水量,河川流量は,夏期において著しく増加し全体的に増加,気温,水温,蒸発散量は,年中通して上昇,増加,積雪,融雪は減少,消雪時期の早期化(約1ヶ月),生態系(魚類)は適性度変化,農作物,植生は適性度変化(作物種の変更や品種改良の必要性),ということが示された。
「人工知能手法を利用した実時間分布型洪水予測に関する研究」小尻利治・ポールスミス・関井勝善
水文データが不足している流域においては、物理モデルよりAI技術を使用した流出モデルの有効性が高いこと、AI技術が非線形性の時系列問題に多大の進歩が見られていることは明らかである。また、入力情報よりすぐに出力値が与えられるとともに分布型流出モデル等の複雑な物理モデルに比べてAI手法のモデルはシンプルさは、実時間フルタリングが容易に適用できることも加味して、実時間洪水予測に適していると考えられる。本研究では、分布型を考慮した実時間洪水予測手法の開発とAI手法の洪水予測分野への新たな適用、を目的として取り組んだ。すなわち、AIモデルと実時間補正手法(フィルタリング手法)を結合させることで計算精度の向上を図り、分布型流出モデルによる洪水リスク管理を検討した。
「水災害を考慮した応用一般均衡分析による世界モデルの構築に関する研究」
小尻利治、菊池祥子、安藤朝夫、堀 智晴
近年ますます危惧される地球温暖化問題に際して、気候モデルと経済モデルそれぞれのアプローチがされているが、統一的な開発思想を持ってその整合性に留意して開発された温暖化影響分析モデルは未だない。そこで本研究では,応用一般均衡モデルを用いて地球温暖化ガス排出と気候影響を分析するモデルを構築した。ここでは、大気大循環モデルとの結合を前提とした時空間スケールで分析が可能で、また経済・気候の相互影響を評価できるRecursive Dynamicな多地域応用一般均衡モデルを構築した。また、モデルに必要な経済データの収集と集計と、水文モデルも経済モデルのスケールのための洪水・渇水判定モデルを作成し、水災害データセットを作成した。
「インドとバングラデシュの水資源コンフリクト」坂本麻衣子,萩原良巳
水資源コンフリクトの構造を明確にし、将来的なマネジメントの可能性を分析するために構築した第3者機関の介入によるコンフリクトマネジメントのシステムに、さらに社会的安定性と数学的安定性についての考察を加え、これをガンジス川水利用に関するインドとバングラデシュのコンフリクトに適用した。そして、コンフリクトマネジメントの実行可能性とその条件を明らかにした。
「バングラデシュのヒ素汚染問題の構造と水利施設整備計画」福島陽介,萩原良巳
技術的には減災が十分に可能ながらも改善されていないバングラデシュのヒ素汚染問題を現地社会環境と深く結びついた災害として認識し、この関連に着目しながら、現地住民の水資源選択行動を説明するために、安全な飲料水に対する欲求度と水運びストレスという2つの概念を導入し、これらを計量化するためのモデルを作成した。そして、これらを用いたヒ素汚染災害軽減のための水利施設整備計画を示した。
「アルダ川流域の環境災害リスク」ヨルダン・ミティフ,萩原良巳
ISM法を用いてアルダ川流域(ブルガリア)の環境災害リスクを分類整理し,エコ,ジオ,ソシオシステムの15の構成要素を7つのレベルを持つ階層システムとして構造化した。
「木津川下流域の粒状有機物堆積量の推定」ヨルダン・ミティフ,竹門康弘
現地調査と航空写真を対応させた分析によって,河床に堆積した粒状有機物量を推定する試みを行なった.その結果,渇水が継続して有機物堆積量が増加したときには有機物量が赤色と緑色の強度と相関することが期待できるが,増水から間がない河床では,水深と有機物量との区別が困難であることが分かった.
「流下粒状有機物の起源と動態に関する研究」竹門康弘・山本佳奈・池淵周一
木津川高山ダム下流と宇治川天瀬ダム下流の三川合流までの流程にそれぞれ9地点と6地点の調査地を設け、流下粒状有機物(SPOM: Suspended Particulate Organic Matter)の流下動態を調査した。その結果、木津川ではダム直下では水生植物起源のPOMが多いもののすぐに陸上起源のものが増え、さらに河原の発達する流程では水際植物や河原植物起源のPOMが増加することがわかった。いっぽう、宇治川では全川に渡り琵琶湖で生産されたと考えられる水生植物起源のPOMが卓越していた。さらに、湖沼起源のプランクトンに着目しその減衰率からPOMの流下距離を推定したところ、木津川では3kmで50%減衰し、10kmで90%減衰するのに対し、宇治川では8-10kmで50%減衰し、26-33kmで90%減衰することがわかった。これらの結果は、木津川では流下有機物が早く入れ替わることを示している。
「土砂堆積構造の階層的把握による河川棲底生魚類の生息場評価」石田裕子・竹門康弘・池淵周一
カワヨシノボリの産卵場所条件と稚魚の成育場所条件の野外調査を行なった.その結果,堆積傾向区間の砂礫堆上流端の水際のはまり石底を産卵場所として利用すること、さらに稚魚は水際の砂利・礫底を利用することがわかった。繁殖場所の空間分布が、傾斜のある淵尻の瀬頭という場所に限定されている事実は、保全すべき生息場所の条件として生息場の配置も重要であることを示している。さらに,成魚や未成熟魚の生息場についても土砂の堆積構造から階層的に分類し、土砂の侵食-堆積傾向や生活史による生息場要求条件の変化を構造的に評価する方法を考察した.
「外来魚除去効果測定調査ならびにブルーギル個体群の変動予測」安部倉完・堀道雄・竹門康弘
深泥池の外来魚個体群の4月?11月の間に,深泥池の開水面域において,えりあみ,投網,モンドリなどを用いたオオクチバスとブルーギルの除去ならびに魚類群集モニタリング調査を行った.また,ブルーギルの個体群モデルを作成し,除去努力を変えた場合の将来の個体数変動を予測した.
「深泥池における水文過程と栄養塩動態に関する研究」嶋村鉄也・田崎紘平・田中賢治・竹門康弘
深泥池集水域ならびに池内とくに浮き島における水文過程を観測するとともに,栄養塩負荷の実態を調査した.その結果,湿原の植生には温度変化を緩衝する作用があり、夏には冷涼な、冬には温暖な温度条件を作り出すことを明らかにした.これらの仕組みは、湿原中央部において北方系の遺存種と南方系の種が混在する理由として働いている可能性が考えられた.
「貯水ダムが下流域の底質環境と底生動物に与える影響」波多野圭亮・竹門康弘・池淵周一
貯水ダム下流域で付着層が発達する原因を明らかにするために,貯水ダムの放流量管理による流況の安定化の程度と下流域の底質環境変化の関係を分析した.その結果,同じ流況の安定化であっても,出水時のピークカットと,平水時や渇水時の安定化とでは,底質に堆積する有機物に対する効果が全く異なることがわかった.すなわち,低水から渇水時に水を溜め込み流量を安定化させる操作が付着層の発達を促す機構であることが明らかとなった.
「貯水ダムが下流域の底質環境と底生動物に与える影響」竹門康弘・高津文人・永田俊
近畿圏各地の河川や貯水ダム下流域の底質環境と底生動物群集について調査を行った結果,貯水ダム下流域生態系において生物体の炭素安定同位体比が減少し窒素安定同位体比が増加することがわかった.2005年には,この現象がダム湖内で生産された有機物に由来するか,あるいはダム湖内の物質循環過程で生成された無機物質にするかを検証するため,貯水池から放水された水の懸濁態有機物(SPOM)ならびに付着層(Epilithon)の炭素・窒素安定同位体比,NO3の窒素安定同位体比,水の酸素安定同位体比を分析した.その結果,SPOMの炭素安定同位体比がダム法流水の値が生物群集の値と同様に低下したのに対して,付着層では-30‰よりも高い値を示した.この事実から,貯水ダム下流域生態系において生物体の炭素安定同位体比が減少する現象は,ダム湖内で生産された有機物に由来すると考えられる.
「トルコセイハン川流域における気候変動影響評価」 (諸外国における活動状況に記載)
「沖GEOSS」 (諸外国における活動状況に記載)
「京都市の人工排熱量分布の推定」鈴木卒論
(水文・水資源学会2006年研究発表会にて発表予定)
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「領域気象モデルのバイアス」佐久間卒論
(水文・水資源学会2006年研究発表会にて発表予定)
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「農業生産システムの安定性の評価」萬修論
(水文・水資源学会2006年研究発表会にて発表予定)
2ページpdfファイル
「短時間降雨予測における地表面加熱の重要性」相馬、伊藤
日本のような湿潤域において、土壌水分等の地表面状態が降水に与える影響は
これまであまり議論されていない。本研究では、詳細な陸面過程モデルを組み込んだ
非静力数値気象モデルを用いたいくつかの数値実験を通じて、夏季の対流性降雨の
発生・発達に対する地表面加熱や土壌水分状態の影響について議論する。現実的な
範囲の土壌水分量や人工排熱量の変化により降雨の位置や強度が変化するという
結果を得た。これは日本の夏季のように豊富な水蒸気が周囲から供給される条件下
においては陸面加熱による水蒸気収束の増加が降水の強化につながることを示唆する
ものである。このことから、陸面過程が軽視されがちな降水短期予報においても、
詳細な陸面過程モデルを組み込むことに加え、適切な土壌水分量初期値や人工排熱量
分布を与える必要性があることを指摘したい。