共同研究活動状況
External Fund Research Project Activity
- 科学研究費基盤研究(A)(2)
「流域生態系の保全・復元に向けた河川階層モデルの開発
〜土砂動態・河川形態・生態系機能の連繋解明〜」(H15-H17)
(代表:池淵周一、センター内の分担者:小尻利治、竹門康弘、城戸由能)
- 科学研究費基盤研究(B)(2)
「次世代降雨レーダーのメソ数値予報モデルへのデータ同化と降雨・流出予測の高精度化」(H16-H18)
(代表:中北英一、センター内の分担者:田中賢治)
- 科学研究費基盤研究(B)(1)
「積雪期を含めた水・熱・物質循環過程の総合化−琵琶湖プロジェクト第4ステージ−」(H16-H18)
(代表:田中賢治)
2005−2006の冬季は各地で観測記録を更新するなど、大雪に見舞われた。本プロジェクトの積雪観測サイトである余呉高原スキー場でも最大で3m以上の積雪を記録し、4月に入っても1m以上の積雪が残るなど、多雪年であった。昨年度から観測を開始した積雪観測システム(積雪深、気温・湿度、風向・風速、日射量、土壌水分量プロファイル、積雪温度・地中温度プロファイル)に、新たに重量式雨量計を追加し、観測を強化した。
日本のような湿潤域において、土壌水分等の地表面状態が降水に与える影響はこれまであまり議論されていない。本研究では、詳細な陸面過程モデルを組み込んだ非静力数値気象モデル(ARPS-SiBUCおよびCReSiBUC)を用いたいくつかの数値実験を通じて、夏季の対流性降雨の発生・発達に対する地表面加熱や土壌水分状態の影響について検討したところ、現実的な範囲の土壌水分量や人工排熱量の変化により降雨の位置や強度が変化するという結果を得た。これは日本の夏季のように豊富な水蒸気が周囲から供給される条件下においては陸面加熱による水蒸気収束の増加が降水の強化につながることを示唆するものである。このことから、陸面過程が軽視されがちな降水短期予報においても、詳細な陸面過程モデルを組み込むことに加え、適切な土壌水分量初期値や人工排熱量分布を与える必要性があるといえる。
さらに、降水短期予報のための陸面(土壌水分)初期値作成を想定し、試験的に2001年5月から8月の4ヶ月間について陸面データ同化を実施した。現業の気象観測(地上気象観測、AMeDAS、高層気象観測)データを駆使して、気象強制力メッシュデータを日本全域について空間解像度約5kmで作成し、陸面過程モデルによるオフライン計算を実行した。夏期(湿潤期)という期間内においても、ボーエン比などに見られる熱収支特性が日々変化し、またその変動幅も場所により大きく異なることが示された。
- 科学研究費基盤研究(B)(1)
「十年にわたる全球陸面エネルギー水収支データセットの構築とその検証解析」(H16-H17)
(代表:沖大幹(東京大学生産技術研究所)、センター内の分担者:田中賢治)
地球大気環境の変動に大きく影響を与える陸面過程についてより深く知るために,全球かつ10年間の水とエネルギーの収支を複数の陸面植生水文数値モデル(LSM)と大気外力を用いて推定する.GSWP-2 (2nd Global Soil Wetness Project)はGEWEX (Global Energy and Water Cycle Experiment), GLASS (Global Land Atmosphere System Study)のもと実施されているモデル間相互比較プロジェクト(Model Inter-comparison Project)の1つであり、米国COLA (Center for Ocean-Land-Atmosphere Studies)のPaul Dirmeyer博士、東京大学生産技術研究所の沖大幹助教授をco-chairとして進められている。世界中からおよそ20もの陸面過程モデルが参加し、1986年から1995年の10年分について、水収支各項、エネルギー収支各項、各種状態量等のデータセットが全球1度グリッド日単位で作成される。GSWP-2のデータセットを用いて、陸面過程モデルSiBUCを初めて全球規模で適用した。田中はSiBUCで相互比較実験に参加するのみでなく、気象強制力やパラメータデータの精度検証やデータ改良等に積極的に貢献している。GSWP-2のベースライン実験や感度実験(共通の計算)を実施するとともに、SiBUC 独自の試みとして、NDVIの時系列解析から全球作物分類図並びに全球農事暦データセットを作成し,全球規模で灌漑を考慮に入れたモデル計算を実施し、灌漑の影響を評価した。これらのデータセットは、気候値ではなく、年々変動を反映した陸面境界条件を提供することになるので、気候変動および年々変動、異常気象のメカニズムおよびそれらに陸面が果たす役割を解明するための基礎的なデータとなる。GSWP-2のホームページ(http://grads.iges.org/gswp/)
本年度はGSWP-2での解析結果を詳細に分析した。解析対象は,水田を含む耕作地の土地利用面積率が全植生に対して75%以上であり,解析対象期間における灌漑要求水量の最大値(グリッド平均値)が5mm以上で最長生育期間が30日以上であるグリッドを,行政単位(3-12グリッド)でまとめた計50領域である.各領域において,2種の年変動に関する順位相関係数(降水量と灌漑要求水量:cc1,降水量とNDVI:cc2)を算出した.cc1が負の相関を示す25領域のうち,13領域でcc2では無相関を示している.この領域では,仮に降水量が減少しても灌漑によって水供給がなされ,作物の生育に支障をきたさなかったため,NDVIが降水量に依存しなかったと考えられる.cc1が正の相関を示す3領域において,cc2もまた正の相関を示している.この領域では,作物に対する水供給が降水に依存しているため,降水量が減少すれば作物が十分には生育せず,NDVIが降水量と正の相関にあると考えられる.すなわち,前者は十分な灌漑能力を有しており降水量の年々変動に対して耐性があると考えられ,後者には降水量の減少に対して十分な補填を実施できる程度の灌漑能力は持ち合わせてはいないと考えられる.これらの解析を通じて、陸面過程モデルSiBUCによる灌漑水量の算定において、灌漑の実現可能性については考慮していないが,モデルに用いている植生パラメータに衛星観測値を用いることにより、結果的に純実灌漑水量に匹敵する灌漑水量をモデルで算定していたこと、降水量と灌漑要求水量とNDVIの相関分析を実施することにより,灌漑能力に関する情報、ひいてはを気象変動に対する農業システムの耐性・脆弱性を指摘しうることが示唆された.
- 環境省環境技術開発等推進事業
「深泥池をモデルとした水域・集水域の生態系管理手法に関する研究」(H16-H18)
(サブテーマ代表 : 竹門康弘、センター内の分担者:田中賢治)
環境省環境技術開発等推進事業「地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発」(代表者:矢原徹一(九州大学教授))の一環として平成16年度から開始した。本研究は、深泥池を閉鎖的な陸水域生態系のモデルとして、外来種の駆除や富栄養化により繁茂した水生植物の除去といった直接的な生物群集管理の方法論と集水域の水文過程や栄養塩負荷を改善するための水循環経路の改良や森林管理といった間接的な生態系管理の方法論の双方を検討するものである。このため2005年度には,1)航空写真撮影と植生景観調査による植生の変遷過程の研究、2)オオクチバスとブルーギルを対象とした外来魚除去効果の研究、3)プランクトンや底生動物群集のモニタリング調査、4)マコモやオオカナダモの刈取り調査、5)池と集水域の水収支推定のための各種気象・水文観測、6)池内の水質調査、7)浮き島内のコアサンプル採取と堆積物中の花粉分析など実施した。
- CREST「水の循環系モデリングと利用システム」
「社会変動と水循環の相互作用評価モデルの構築」(H13-H17)
(代表 : 寶 馨(京都大学防災研究所)、センター内の分担者:小尻利治、田中賢治)
急激な人口増と社会の変動が予測されるアジア域を対象に、従来個別に開発されてきた水循環解析モデルの共通化と精度向上を行い、水循環と社会変動との相互作用を定量化することにより、持続可能な水政策の立案に資することを目的としている。
(A)アジアモンスーン地域を対象とした水循環モデルの構築(水循環モデルグループ):わが国およびアジア諸国の社会変動が河川流域の水循環、国際的な水資源循環・収支に及ぼす影響の予測モデルを構築する。
(B)自然の水文循環と社会変動の相互作用を考慮した水循環モデルの構築(相互作用グループ):アジアの淡水資源の利用可能性とリスクを定量的に評価・予測する。
(C)国際的水循環・水収支の自然・社会・経済シナリオ分析と貢献戦略(国際水連関グループ):我が国の水(食糧、産業)政策、国際貢献戦略の将来像を明らかにする。
研究概要(小尻)
研究概要(田中)
- CREST「水の循環系モデリングと利用システム」
「ダム下流域における底生生物群集構造の変化」(H15-H19)
(代表:永田俊(京都大学生態系研究センター)、センター内の分担者:竹門康弘)
- RR2002「人、自然、地球共生プロジェクト」
課題5「広域水循環予測及び対策技術の高度化」、「c. 領域水循環統合モデルの開発と
それを用いた海洋性砂漠の水文・水循環とその変動の解明と予測に関する研究」(H14-H18)
(代表 : 植田洋匡(京都大学防災研究所)、センター内の分担者:小尻利治、浜口俊雄)
- 総合地球環境学研究所プロジェクト
「乾燥地域の農業生産システムに及ぼす地球温暖化の影響(ICCAP)」(H13-H18)
(代表:渡辺紹裕(総合地球環境学研究所)、センター内の分担者:小尻利治、田中賢治)
地球温暖化や気候変化の影響を、農地での作物生育だけでなく、地域的な農業生産システムへの影響の様相や機構、程度をとらえる試みを通して、「自然と人間の関係の仕組みとしての農業」をより明確に理解し、気候変化に対する課題と対策を明らかにすることを試みる。トルコ地中海地域のセイハン川流域では、山間部には天水小麦地帯が広がり、海岸平野部は冬の山岳地帯の雨や雪を貯水して夏に利用する広大な灌漑農業地帯で、主にトウモロコシや綿花、果樹などが栽培されている。セイハン川流域における農業生産システムの基本の把握と、将来の気候変化のシナリオを基にして、地域の水文・水資源、灌漑排水システム、自然植生、作物生育、農家・農民の行動を含む営農・作付け体系や広域的な食料生産・流通などに及ぼす影響を明らかにする。
水文グループとしては、乾燥地帯での流出モデルの作成と地球温暖化による流量特性の変化を解析する。気候グループによる温暖化シミュレーション、農業・経済グループによる農業生産過程の応答を加えた水資源動態モデルを構成する。
H17年度の報告書(8ページpdf file)
領域気候モデルのバイアス補正についての報告書(2ページpdf file)
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