共同研究活動状況
External Fund Research Project Activity
- 科学研究費基盤研究(A)
「衛星解析による全球灌漑農地情報と陸面水・熱収支解析を活用した水資源管理支」(H18-H20)
(代表:池淵周一、センター内の分担者:田中賢治)
H18年度の活動内容:
独自に提案している NDVI 時系列解析による作物分類・農事暦作成手法は、対象が全球で空間分解能
1度、時間分解能1ヶ月である。より詳細なデータセット作成を目的として、中央アジア・アラル海
流域、ブルガリア・トラキア平原、北タイメーワン流域および周辺域、トルコ・カイセリ地方、
黒海沿岸域、ギリシア・テッサリア地方で農地情報取得調査を実施した。調査項目は作付け作物・
生育期間・灌漑実施の有無である。
可搬型分光放射計(Field Spec)を用い、定期的に小麦の分光計測および葉内成分分析を行い、
各生育段階における分光情報の特徴について検討した。さらに、中央アジア・アラル海流域に
おいて、畑地・自然植生・砂地・塩害地の分光反射率データを取得した。
2000年から2004年の5年間分のTERRA/MODISデータを用いて、東南アジア(主にメコンデルタ)の
稲作地帯を抽出するとともに田植え期と出穂期の推定を行った。また農地調査を行った様々な地点に
おいて、作物分類・農事暦作成手法が高分解能 NDVI でも適用可能であり、特に水資源管理の観点
から重要となる灌漑を実施しているか否かの判断に有効なツールとなることを確認した。
トルコおよび中国における灌漑農業地域の作目・作付面積・水利用に関する情報の収集を進める
とともに、代表的な大規模灌漑事業地区を対象として水文モデルを適用し、水収支実態の解明を
行った。
コムギの播種日および成熟日と標高との関係を解析し、各地点の標高からコムギの播種日と成熟日
を推定する式を導いた。また、気温、日長、全天日射量、土壌水分含量をインプットとして、
コムギの全乾物重、葉面積指数および収量をシミュレートする生長モデルを開発し、トルコ共和国
アダナ県各郡のコムギ収量を推定した。
- 科学研究費基盤研究(A)
「社会・生態システムにおける生活者参加型環境マネジメントの研究」(H18-H20)
(代表:萩原良巳、センター内の分担者:竹門康弘)
1)萩原清子佛教大学教授:鴨川橋間調査票の作成ならびに佛教大学学生
による調査、そして調査分析方針と環境評価法の哲学ならびに手法の適用
可能性を検討した。
2)谷本客員准教授:水資源問題で重要な上流域(殆んど過疎地域)の社会的
安定調査を大原で行なってもらい、大原地区の問題と他の過疎地域の比較調査
を行なった。
3)竹門准教授:1)の社会調査とあわせれば、河川という狭い範囲ではあるが
興味深い結果が得られることを期待して、鴨川社会調査対象地域における鳥類
と魚類の分布状態の観測調査を行なってもらっている。
4)坂本麻衣子東北大助教:鴨川ダム問題に関するコンフリクト分析と流域コン
フリクトマネジメントの構想を立てた。
- 科学研究費基盤研究(B)(1)
「積雪期を含めた水・熱・物質循環過程の総合化−琵琶湖プロジェクト第4ステージ−」(H16-H18)
(代表:田中賢治)
第2期積雪モデル相互比較プロジェクト(SnowMIP2)にSiBUCで参加し、Alptal(スイス)、BERMS(カナダ)、
Fraser(アメリカ合衆国)、Hitsujigaoka(日本)、Hyytiala(フィンランド)の5地点において、
積雪および地表面熱収支のオフライン実験を行った。Hyytialaにおいては積雪が過大に計算されたが、
それ以外の地点においては概ね良好に積雪融雪過程を再現することができることを確認した。
また、USDA National Water and Climate Center提供のデータを用いて北米各地の積雪水量の検証を
行ったところ、SiBUCの算定値の方が衛星プロダクトに比べて精度が高かった。
さらに、降水短期予報のための陸面(土壌水分)初期値作成を想定し、試験的に2001年から2006年
の6年間について陸面データ同化を実施した。現業の気象観測(地上気象観測、AMeDAS、高層
気象観測)データを駆使して、気象強制力メッシュデータを日本全域について空間解像度約5kmで
作成し、陸面過程モデルによるオフライン計算を実行し、地表面水・熱収支各項、土壌水分や積雪
などの状態量を推定した。また、地表面状態量の中でも時間変動が緩やかで初期値に対する依存性
が大きい土壌水分量を取り上げ、雲解像度大気陸面結合モデルARPS-SiBUCに入力して夏季の熱雷に
対する影響を検討した。その結果、現実的な土壌水分量分布の変化が熱雷に十分大きな影響を
与えうることが示された。またその影響は山地域よりも平野部で大きくなり、水平一様な土壌水分量
を入力した場合と比べて、現実的な土壌水分量を入力することで降水分布の再現精度が向上した。
- 京都大学生存基盤科学研究ユニット萌芽研究
「衛星解析によるアジア域の農地データセットの作成および水資源管理支援」(H18-H19)
(代表:田中賢治、センター内の分担者:小尻利治)
現在、世界の水消費の約85%は農業用水であり、農作物の約40%は灌漑で栽培されている。灌漑の効果を取り扱
う陸面過程モデルは既にいくつか存在するが、モデルパラメータ(生育作物の種類、農事暦)を正しく設定しなけ
れば、モデルの性能を十分に発揮することはできない。しかしながら、特に大部分の灌漑農地が存在するアジア
域で信頼性の高いデータセットは存在せず、早急に整備する必要がある。本研究では衛星データによる植生フェ
ノロジー解析をベースとして、アジア各地の地域研究で培われてきた気候条件、農業形態、水利用形態等に関す
る様々な知見を融合することで、より現実的な作物種や農事暦(生育期間)の空間分布情報を高解像度で整備する
ことを目的とする。さらには、灌漑必要水量や土壌水分等をはじめ、様々な陸面水文諸量を全球規模で算定し、
アジア諸国の様々な流域の水管理や地域研究の支援情報を提供することを目的とする。
平成18年度研究報告書(6ページpdf file)
- 環境省環境技術開発等推進事業
「深泥池をモデルとした水域・集水域の生態系管理手法に関する研究」(H16-H18)
(サブテーマ代表 : 竹門康弘、センター内の分担者:田中賢治)
環境省環境技術開発等推進事業「地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支える
モニタリング技術の開発」(代表者:矢原徹一(九州大学教授))の一環として平成16-18年度に実施した。
深泥池を閉鎖的な陸水域生態系のモデルとして、外来種の駆除や富栄養化により繁茂した水生植物の
除去といった直接的な生物群集管理の方法論と集水域の水文過程や栄養塩負荷を改善するための
水循環経路の改良や森林管理といった間接的な生態系管理の方法論の双方を検討した。その一環として,
1)航空写真撮影と植生景観調査による植生の変遷過程、
2)オオクチバスとブルーギルを対象とした外来魚除去効果、
3)プランクトンや底生動物群集のモニタリング調査、
4)マコモやオオカナダモの刈取り調査、
5)池と集水域の水収支推定のための各種気象・水文観測、
6)池内の水質調査、
7)浮き島内のコアサンプル採取と堆積物中の花粉分析などを実施した。
- 総合地球環境学研究所プロジェクト
「乾燥地域の農業生産システムに及ぼす地球温暖化の影響(ICCAP)」(H13-H18)
(代表:渡辺紹裕(総合地球環境学研究所)、センター内の分担者:小尻利治、田中賢治)
トルコ地中海地域のセイハン川流域では、山間部には天水小麦地帯が広がり、海岸平野部は
冬の山岳地帯の雨や雪を貯水して夏に利用する広大な灌漑農業地帯で、主にトウモロコシや
綿花、果樹などが栽培されている。これまで、流域の気象・水資源や土地利用・営農・作付け
体系、灌漑排水システムなどを診断して、現在の農業生産システムの基本構造を分析してきた。
また並行して、IPCCのシナリオ(A2やA1B)に基づく2070年代の対象地域の気候を、最新の気候
モデルなどで見通して、可能な限り高い解像度・精度で気候変動シナリオを設定した。この
シナリオに基づいて、地域の水文・水資源、自然植生、作物生育、灌漑排水、営農・作付け
体系や広域経済などに及ぼす影響を、それぞれの対象ごとに開発したモデルを活用して、
具体的に明らかした。
ICCAPのホームページ(
http://www.chikyu.ac.jp/rihn/pro/2004_1-1.html)
H18年度の報告書(8ページpdf file)
- CREST「水の循環系モデリングと利用システム」
「社会変動と水循環の相互作用評価モデルの構築」(H13-H18)
(代表 : 寶 馨(京都大学防災研究所)、センター内の分担者:萩原良巳、小尻利治、田中賢治)
急激な人口増と社会の変動が予測されるアジア域を対象に、従来個別に開発されてきた水循環解析
モデルの共通化と精度向上を行い、水循環と社会変動との相互作用を定量化することにより、
持続可能な水政策の立案に資することを目的としている。
(A)アジアモンスーン地域を対象とした水循環モデルの構築(水循環モデルグループ)
(B)自然の水文循環と社会変動の相互作用を考慮した水循環モデルの構築(相互作用グループ)
(C)国際的水循環・水収支の自然・社会・経済シナリオ分析と貢献戦略(国際水連関グループ)
研究概要(萩原)
坂本麻衣子東北大助教と水資源の社会リスクであるインド・バングラデシュの
ガンジス川利用や球磨川支流川辺川ダムの開発か環境かというコンフリクトの
マネジメント可能性を考え、本年度は主として論文を書いた。
研究概要(小尻)
水資源分布状況が社会の成長に与える影響を定量的に把握するため、水資源と
社会の相互作用を軸にしたダイナミクスモデルを開発している。経済部門間の
連関構造と需給関係の価格を通じた調整機構をモデルに反映するため、3つの
産業部門と水部門との連関構造を応用一般均衡モデルで表現し、日本を対象と
して検討した。1995年を基準均衡年とし、輸入関税率を考慮して水部門の売上
を計算した結果、関税の増加に伴って国内生産が増加し、水にかかる国内コスト
が増加する傾向が表現できた。さらに、気候−水資源−経済活動の相互作用を
考えるためのモデル開発を進めた。地球規模の社会・経済活動の結果、開発と
成長がどのような局面を迎え得るかを予測する、この種の解析は、現象そのもの
の不確定性や、社会的要因の影響が大きく、なかなか難しい課題であり、
今後ともデータの精度の向上、もっともらしい説得力のある将来シナリオの設定、
解析結果の解釈やその利用方法などについて克服すべき課題は多い。
研究概要(田中)
中国淮河流域では10kmスケールのグリッドセル型のモデル(SiBUC)を用いて、
大陸河川の水循環を明らかにしようとした。これはGAME-HUBEXの流れをくむ
研究である。多数回にわたる現地踏査とデータ収集、現地からの研究者招聘
により、中国からの得難いデータを整備した。また、農地の作付けパターン
を詳細に調べ上げ、土地被覆・土地利用の季節変化を明らかにした。従来、
データの入手が困難な大陸のデータは、米国等の人工衛星データやDEMに依存
することが多かったが、衛星データによる土地利用・土地被覆の精度は必ず
しも十分ではなかった。今回の現地踏査とヒアリング等に基づく研究の結果、
当該流域の地表面状態をかなり正確に補正することができたのは大きな成果
である。
- CREST「水の循環系モデリングと利用システム」
「人口急増地域の持続的な流域水政策シナリオ研究」(H15-H20)
(代表 : 砂田憲吾(山梨大学)、センター内の分担者:吉川勝秀)
急激な人口増加と開発に伴う深刻な水問題が顕在化しているモンスーン・アジア
地域アジア途上国の水問題解決をめざす。そのために、湿潤地帯から乾燥地帯に
わたるアジア地域を対象に異なる典型的な水問題を抱える8河川流域を選び、
それぞれの流域での水問題の実態を構造的に把握・分析して、問題解決のための
政策シナリオを提言する。また、統合的水資源管理を実現するためのアジア版統合的
ツールボックスを提示する。
研究概要(吉川)
タイでの国際ワークショップ、イギリス、アメリカ調査を行うとともに、都市化が急激に
進展した日本の中川・綾瀬川流域での治水対策の評価、利根川流域における治水管理等に
ついて整理を行い、治水面での水政策シナリオについての研究・評価を行った。その成果
のいくつかについては論文として発表した。
- 国土交通省建設技術研究開発助成
「都市水害時の地下浸水の予測と対策に関する研究」
(代表:戸田圭一、センター内の分担者:小尻利治、浜口俊雄)
豪雨により生じる都市水害時の地下浸水に焦点を絞り,地下街・地下鉄・ビルの
地下室の浸水過程を精度良く予測できるシミュレーションモデルを開発すると
ともに,浸水被害を防止・軽減するための効果的な対策をソフト面から考察して
提案すべく研究を進めた.特に河川からの溢水氾濫位置ならびに溢水量を水文
流出解析から精度良く再現または予測できる計算システムの構築を目指して研究
を進めた.そのために対象を鴨川流域に絞り,同流域の解析に必要な河川水文
データや気象データならびに河川設計データが莫大に存在していたので,まずは
それらを入手整理し,その水文特性について様々な方向から検討を行った.
- 科学技術振興調整費:我が国の国際的リーダーシップの確保
「世界の水問題解決に資する水循環科学の先導」
(代表:沖 大幹(東京大学)、センター内の分担者:田中賢治)(H16-H18)
様々な土地利用に適用可能な地表面エネルギー・水収支算定モデル(LSM)の開発
を進め、灌漑用水を含めた地表面エネルギー・水収支算定モデルを開発し、GSWP2
プロジェクトの枠組みにおいて、陸面過程モデルSiBUC を用いた灌漑を考慮する
全球土壌水分量分布の算定を行った。これにより、異なる空間スケールでの灌漑
取水を含めた陸面水文過程モデルを実現するとともに、全球において灌漑要求水量
を推定することが可能となった。さらに、これらの地表面エネルギー・水収支計算
結果を詳細に分析することにより、陸面過程モデルSiBUCによる灌漑水量の算定に
おいて、灌漑の実現可能性については考慮していないが、モデルに用いている植生
パラメータに衛星観測値を用いることにより、結果的に純実灌漑水量に匹敵する
灌漑水量をモデルで算定していたこと、降水量と灌漑要求水量とNDVIの相関分析を
実施することにより、灌漑能力に関する情報、ひいては気象変動に対する農業シス
テムの耐性・脆弱性を指摘しうることが示唆された。
- RR2002「人・自然・地球共生プロジェクト」
「乾燥地における地表水・地下水の結合した分布型流出モデルの開発」(H14〜H18)
(代表:石川裕彦、センター内の分担者:小尻利治、浜口俊雄)
地表水は地下水に比べても流速が数十倍〜数百倍,またはそれ以上である.
地表水と地下水の中間に位置する土壌水は不飽和浸透流で地下水より更に
小さな流速となる.乾燥地ではこれらの浸透現象を一度に結合させた新しい
モデル化が必要で,かつ,表面流にワジと呼ばれる水無川の現象も含めた
モデル化も必要である.これらのモデル化を,Hydro-BEAMなど既存の分布型
流出モデルに組み込むことが統合流域評価には急務であり本研究の目的でもある.
将来的には水循環が不確かな乾燥地帯への適用や,地表面の緑化を含めた水資源
評価と開発方法の立案を最終目標とする.
- 科学研究費基盤研究(B)
「農業水利施設の性能設計・性能施工に関する研究」(H??-H??)
(代表:??、センター内の分担者:浜口俊雄)
農業水利施設の性能設計に関して,土構造物に対して透水係数分布のモデル化を
うまく利用して解の一意性を確保し,領域全体に観測更新感度を高めて同じ観測
条件下であっても従来のモデル化より観測更新の反応が向上するような手法を
提案した.さらにその観測更新感度についても,数学的な観点からも更新感度向上
のメカニズムと有益性を確認した.その成果から,少ない観測データからも不均一性
の地盤をモデリングでき,土構造物の性能設計を行う際に局所的な問題点を的確に
見つけ出せると期待できることがわかった.
- 科学研究費基盤研究(B)
「リアルタイム防災への適用を視野に入れた河川堤防の高水時安全度評価に関する研究」(H??-H??)
(代表:関口秀雄(京都大学防災研究所)、センター内の分担者:浜口俊雄)
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